東京山の手大雷雨(2025年9月11日)
気象レーダー(気象庁による)2025年9月11日13時10分~16時00分
活発な雷雲集団が発生し、東京?神奈川は、局地的な猛烈な雨となりました。
雨雲の動きをみると、個々の雨雲は東北東に進みました。
横浜?川崎付近で発生?発達した雨雲が、西方から進んできた別の雷雲集団と、
23区西部で一体化したようにも見えます。

1時間雨量最大値  
目黒区工大橋(15時20分) 134.0mm
川崎市中原区役所(15時30分) 130.0mm
品川区荏原(15時30分) 122.5mm
目黒区碑文谷(15時20分) 118.0mm
川崎市中原DKC(15時20分) 115.0mm
川崎市新作消防(14時50分) 114.0mm
川崎市井田消防(15時20分) 105.0mm
世田谷区玉川(15時20分) 100.0mm
世田谷区世田谷(14時36分) 92.0mm
川崎市西ヶ崎橋(15時20分) 97.0mm
大田区田園調布下(15時40分) 99.0mm
川崎市久末小学校(15時20分) 96.0mm
川崎市高津DKC(14時50分) 94.5mm
品川区西五反田(15時30分) 91.5mm
川崎市平瀬橋(14時50分) 90.5mm
川崎市宮前DKC(14時40分) 90.5mm
目黒区中央町(15時20分) 90.0mm
大田区羽田(16時12分) 88.5mm
横浜市中区(22時47分) 88.5mm
目黒区東根(15時20分) 86.0mm
大田区池上(15時40分) 85.0mm
世田谷区上用賀(14時40分) 85.0mm
品川区品川(15時40分) 81.5mm
川崎市宮前区役所(14時40分) 80.5mm
気象庁アメダス及び
東京都、目黒区、品川区、川崎市の雨量計による

【秋雨前線の南下】

気象庁作成の速報天気図です。
秋雨前線が日本付近をゆっくり南下していました。
前線の南側では、南西の湿った空気が流れ込み、
活発な雨雲が作られやすい状況でした。

Earthが再現した地上風の様子(こちら

鹿島灘から東風が流れ込んできていた様子です。
南西からの暖湿気が、東風の上に持ち上がって、
より活発な雨雲が生成したのかもしれません。

 

【立会川浸水被害】

記録的大雨により、目黒区や品川区では浸水被害が出ました。主に立会川について浸水被害場所を地図にプロットしました。なお、背景地図は、あえて大正6年測図の旧版地形図にしています。
下の地図をクリックすると大きな地図がみられます。
"東京山の手大雷雨”の浸水被害か所(×印)。背景地図は大正6年測図2万5千分1旧版地形図「東京西南部」
作図にあたり、埼玉大?谷健二先生開発の「今昔マップ」、全国Q地図、国土地理院「色別標高」「地形陰影図」を参考にしました。
なお、色別標高は現在の標高データをもとにしたものです。大正6年当時の立会川の流路については加筆しています。

土地利用を概観すると、浸水したところの多くは、大正6年(1917年)当時は、水田だったことがわかります。
当時の地図には、「伊藤博文墓」「勝海舟墓」などが記されているのが興味深いです。
立会川の北側の台地(目黒台?目黒面)にはいくつかの集落がみられますが、
立会川の南側の台地(荏原台?下末吉面)は、未開発だったようです。
現在は台地も低地も住宅などの建物でびっしりです。
地表面はアスファルトなど人工構造物で覆われ、雨がふったら地面に浸み込む水はほとんどなく、
地表面を雨水が流れるようになるため、大雨の際は低地の浸水リスクが高まったといえます。

浸水被害地点をハザードマップにかさねたものは(こちら)です。
今回の浸水被害地点は、0.5~3mの想定浸水区域とほぼ重なります。

"緑道脇浸水被害”
立会川流域の土地利用の変化を表現した模式図です。
かつては、大雨になっても地中に浸透する雨水がありましたが、
現在は宅地化により地表面は人工地盤(コンクリート?アスファルト)で、
固められてしまいました。
大雨になると、雨水は地表面を流れ、低い土地に向かいます。
緑道は暗渠の上に作られています。この緑道沿いの低地では浸水被害が起こりやすいのです。
暗渠となっている立会川は排水機能を持っていますが、
1時間に100ミリ以上の雨が降ってしまうと、排水機能の限界を超えてしまうと思われます。
大正時代にも低地が浸水することはあったでしょう。でもそこは水田でした。


谷沢川の溢水
等々力渓谷下、矢川橋上流

等々力渓谷の遊歩道を降りると右岸側は舗装道路となります。
転落防止用のフェンスの川側下部にアクリルの止水板があります。
記録的な大雨(1時間に113ミリ)によって、短時間ではあるが溢水が生じました。

河川ライブカメラ。左は矢川橋、右は玉川樋管上流(東京都水防災総合情報システム、利用申請中)

動画は、5分間隔で20倍速となっています。
13時30分頃から雨が降り出し、14時00分頃から急激に増水し、14時15分には氾濫危険水位を超えました。。
14時35分~45分頃に溢水が確認できます。止水板は最近設置されましたが、ある程度の効果はあるようです。

世田谷区玉川支所の雨量と矢川橋の水位
都市河川の特徴でもありますが、水が出るのが早いですね。
1時間に100ミリを超える猛烈な雨は、めったに観測されません。記録的な雨です。



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駒大?パート 平井史生